6週連続開催となった
函館のフィナーレを飾ったのは函館記念。
サマー2000シリーズの対象レースで
ハンデ戦で行われた重賞だった。
今回はそのハンデ差に泣いた馬と軽ハンデを享受できた馬の差が
はっきりしたレースだったのではないだろうか。
好スタートを切ったのは最軽量ハンデのセイカアレグロだった。
48キロの斤量を活かして、コーナー4つを巧みに利用し
逃げ粘りを図ろうという竹之下騎手の算段。
そうはさせまいと
キングトップガン(横山典)やミッキーパンプキン(池添)が
セイカアレグロの次のポジションから機会を伺う。
レース途中で、キングトップガンは脱落。
現段階では何があったのかはわからないが、
急な下がり方を見ると、脚元か心房細胞ということが考えられる。
いずれにしてもセイカアレグロは
最軽量であったわけで人気薄なのだから、
「逃げ」という選択は間違っていなかったんじゃないかと思うが、
2000mという逃げ切るには半端な距離と、
2番手につけた騎手が横山典弘騎手というベテランと、
賞金の高いレースにだけは異常に上手さを見せる池添騎手がいたことが
セイカアレグロにとっての不幸だった。
少なからず4コーナーを回りきるまで、
セイカアレグロはいい形でレースの主導権を握っていた。
今回の函館記念の勝負の分かれ目は4コーナーだろう。
1番人気のトウカイパラダイスは
明らかにマイネルスターリーを意識していたし、
それはマイネルスターリーも同様だったろう。
勝負所で先に動いたのはマイネルスターリー。
タイミングも馬の手ごたえもなかなか良かった。
それを見るように上がっていったトウカイパラダイス。
一番人気という重圧もあったのかもしれないが、
もう少し積極的な展開があったとすれば・・・
違った結果もあったのかもしれない。
人気の2頭が4コーナーをせりあがっていく瞬間、
ミッキーパンプキンの池添騎手は
「勝った!」と勝利を確信していたんではないかと思う。
それほどまでにミッキーパンプキンにレース展開は向いていたように思える。
これは別に批判ではないが
そう思っても仕方がないのではないだろうか。
しかし、不幸にもこのレース函館記念はハンデ戦。
当然ながら、馬によって背負うべき斤量が違う。
ミッキーパンプキン55キロに対して勝負を仕掛けるのは
54キロのトランスワープと52キロのイケトップガンの丸田騎手だ。
普段ローカルの裏開催で腕を振るい、
なかなか大舞台に出てくることが少ない騎手と華やかな重賞戦線で活躍し、
三冠馬オルフェーヴルなど数々の名馬にまたがる池添騎手との
大局的な3人の攻防は、夏競馬ならではの組み合わせだろう。
結果的に勝ったのは、
小回りが得意なトランスワープが約1馬身差で、
8歳にして洋芝適性が開花したイケトップガンが
ゴール前にてハナ差でミッキーパンプキンを捕まえ2着だった。
人気になったトウカイパラダイスは4着。
前にも書いたが、マイネルスターリーを意識しすぎたのかもしれない。
もっと違う結果があってもよかったと悔やまれる展開。
マイネルスターリーは直線で失速の6着。
直線に入ったところで、横を向いていた。
気にいらないことがあったのかもしれない。
乗り難しい馬であることは容易に想像がつく。
斤量は前回と同じで、前回よりも楽なメンバーは手薄。
川須騎手とは2回目のコンビだが
前回のコンビでも良績とは言えない結果であることから
あまり相性が良くないのではないかと思ってしまう。
マイネル・コスモ軍団で
川須騎手と丹内騎手のどちらが格上なのかはわからないが、
今回はマイネルスターリー(川須)と
コスモファントム(丹内)の乗り役は
逆の方がよかったのではないだろうか。
マイネル・コスモ軍団といえば
期待馬には松岡騎手や柴田大知騎手を乗せるし(最近はそうでもないか…)
そうでない場合は丹内騎手や中谷騎手などが乗り手を務めている。
最近では蛯名騎手や石橋騎手への依頼もチラホラ見えるが、
今回の結果は若干裏目に出たように思える。
昨今、社台グループを中心に騎手を固定化しないことが多いが、
(乗り手が上手ければ別だが)馬にも乗りなれた人間に
レースでは乗ってもらいたいという願望はないのだろうか。
以前のように、
テイエムオペラオーといえば、和田。
ディープインパクトといえば、武豊。
ナリタブライアンといえば、南井。
というような「馬=人」が
見えづらくなっているように思う。
ウオッカといえば・・・
ブエナビスタといえば・・・
と言われてもはっきりした顔が出てこない。
経済状態が厳しいとは思うが、
勝負レースは常に外国人ジョッキーか地方出身騎手では、
せっかくJRAが育てた有望な若手が育たないのではないだろうか。
地方競馬で燻ってしまうだけの騎手の存在は
もったいない人材が多いのではないだろうか。
中には浜中騎手のように若くしてローカル回りを経て、
リーディングに名を連ねる騎手もいるわけなので、
これには関係者も今でも頑張っている方は多いと思うが、
より一層考えてもらいたい部分だ。
いずれにせよ、
今回の函館記念は普段は華やかな舞台を中心に活躍している騎手と、
ローカルを主戦場にする騎手の激しい攻防が見られた。
これこそ夏競馬の隠れた醍醐味ではないだろうか。
ハンデ差を活かし、有力馬を負かす馬。
地の利を得て、中小零細牧場の馬が高額良血馬を負かすドラマ。
ローカル主体の夏競馬だからこそ、
負けたくないローカルが主戦場の騎手達。
それぞれの思いがかかった夏競馬のドラマは、
まだまだ盛り上がりを見せそうだ。