2012-10-07 若駒の勇敢な挑戦に拍手−毎日王冠−

毎日王冠の勝ち馬・カレンブラックヒルの馬名の由来を調べると、
「冠名＋ネパール原産の知的で勇敢な猟犬種より」となっています。
カレンチャンと同じ鈴木隆司オーナーの持ち馬ですが、
両者の名前からくるイメージは対照的です。

ブラックヒルとは、ネパール原産のガードドッグ及びセントハント用犬種で、
古来からかなり厳重に管理されていた犬種で
ジャコウジカの密猟犬として有名な犬の名前。
性格は主人家族に対しては愛情深く、知的で勇敢とされています。

およそ半年前、
デビュー以来ビッグレースに無縁だった秋山騎手を背にして堂々のＧ１制覇。
その時と同じ府中競馬場で、古馬との初対決。

相手は最強世代のダービー馬・エイシンフラッシュ。
そして１年先輩で超良血馬のトーセンレーヴなど・・・
他の有力馬もマイル路線で力をつけてきた馬も多く、
1800ｍという距離で「中距離の馬が強いか、それともマイルの馬が強いか」という
ある程度の推理を自身の中で構築しないと、
なかなか馬券を買いにくいレースだったかもしれません。

スタート直後、ハナをきったのは想定通り、シルポート。

その直後にカレンブラックヒルとグランプリボスが居る展開。
カレンブラックヒルはグランプリボスに絡まれながらも、
折り合いを欠くことなく、淡々とレースを進めます。

１番人気だったカレンブラックヒルですが、
競馬に関連する仕事をしている人間からの評価は
決して高いとは言えませんでした。

理由は対戦相手のレベルや距離への不安もあるかもしれませんが、
「過剰人気になっているんじゃないか」という見方の人が
圧倒的に多かったように思います。

この評価が騎手の中にも潜在的な意識として
あったのではないかと思っています。

その証拠に1000ｍの通過タイムは57.7秒のハイペース。
そのペースを考慮して、レース終盤にかけて、
誰もカレンブラックヒルやシルポートを捕まえにいこうとしていません。　

「このハイペースなら先行勢は総崩れ」そういう意識が強かったように思います。
カレンブラックヒルの実力を考慮すれば、
後方にいる馬の末脚で交わせるという事実が最後の直線に入るまで
どの騎手も真剣に追わせなかったのかもしれません。

秋山騎手はレース後のインタビューで
「３コーナーまではスムースに行って、そこから少し反応が鈍かったのですが、
何とか最後まで頑張ってくれました。
直線でゴーサインを出した時は前の馬は交わせると思っていたので、
あとは後ろからの馬がどうかというところでした。」と語っています。

カレンブラックヒル自身にとってもかなり苦しい展開だった事は間違いありません。

しかし後方待機の馬からすれば、
思っていた以上にカレンブラックヒルが
頑張ってしまったのではないでしょうか。

事実、２着のジャスタウェイが33.0秒、
３着のタッチミーノットが33.1秒の豪脚で迫っているにも関わらず、
最後はカレンブラックヒルが頑張り、勝利を手にします。
あの粘り強さは地力の高い証拠でしょう。
また、直線のコース取りもよかったように見えます。
秋山騎手の手腕を素直に敬意を表したいほど抜群のコース取りだったといえます。
最後まで脚が持ったのも馬場のおかげかもしれません。

デビュー以来５戦。
ひたすら手綱を取ってきた秋山騎手だからこそできた
カレンブラックヒルの力を信じきった騎乗だったのではないでしょうか。

ダービー馬・エイシンフラッシュや今年の春ブレイクした
フェデラリストは共に見せ場なく惨敗。
休み明け１走目という事と、彼等は天皇賞を始め、
年末まで見据えている事を考えるとここで見限るのは早計かも知れません。

勝ったカレンブラックルは間違いなく、天皇賞の有力馬になりました。
天皇賞だけではないですね、混戦のマイル路線でも、
トップに立つ勢いを見せています。

今回のレースは多少、展開が向いたこともありますが、
まずは素直にデビュー５連勝の偉業を称えたいと思います。

あのエルコンドルパサーでも成し得なかった、無敗の毎日王冠制覇。
カレンブラックヒルの今後が非常に楽しみになったレースでした。
古馬勢の天皇賞での巻き返しにも期待したい。
月末の府中は例年にない盛り上がりを見せてくれそうです。

江戸川乱舞　今後の注目馬

・グランプリボス
ハイペースの中、最後はまで粘りを見せた。
人気にならないなら、次走はオイシイ。

・シルポート
東京1800で逃げ切りは難しい。
他のコースで改めて期待。