ついに秋競馬が始まった。
秋の中山・阪神開催から年末の有馬記念まで
毎週のように重要なレースが続く。
油断して「あの馬も…この馬も」と悩んでいる間に、
いつの間にか2013年を迎えていそうだ。
1レース1レース、心を込めて予想していきたい。
今週は下半期の短距離王を決める
スプリンターズSの前哨戦・セントウルSが行われた。
注目はなんと言ってもスプリント女王・カレンチャンに、
スプリント王を目指すロードカナロアの直接対決。
さらに漁夫の利を得たいマジンプロスパーやサンカルロなど、
豪華なメンバーが揃った。
秋の訪れを伝えるセントウルSは意外な形で幕を開けた。
ハナをきったのは、上昇著しいマジンプロスパー。
元プロ野球選手の佐々木主浩さんの所有馬だ。
それに続いたのが、まさかの女王・カレンチャン。
この想定外の展開に場内は騒然とした。
私自身も中山競馬場のターフヴィジョンで観戦していたが、
このまさかの展開に場内は「イヤな予感」を感じとっていたかもしれない。
この上位馬のマッチレース。
想像がついていた人がいるとするならば、
「最後の直線での攻防で…」とか「直線抜け出した2頭が…」など、
レースの終盤での出来事と想像していた人も多いはずだ。
そう。
レースは思いもよらぬ展開でスタートしたのだ。
この上位人気馬が快調に飛ばす展開ならば、
他の馬もついていかざるを得ない。
レースを引っ張る上位三頭は、
このレースの三強を形成しているメンバーでもある。
それに続くは4番人気エーシンヴァーゴウ。
開幕週と言う事も手伝って
全馬必至に前を取ろうとする早いペースでレースは進んでいく。
押し出して出て行ったマジンプロスパーは直線に入って早々、垂れてしまったが、
スプリント女王・カレンチャンは牝馬にしては
重い斤量を背負いながらも一瞬、先頭に立つ。
56キロの斤量・約半年ぶりのレース、+22キロの体重。
この条件で4着なら、
スプリンターズSでは逆転があると見ていいだろう。
そのカレンチャンを残り50メートル付近で交わして
ロードカナロアが先頭に立つ、そのままゴールするかと思われた刹那、
馬群の中から1頭の黒い帽子の馬が一気に伸びてきた。
その名はエピセアローム。
その乗り役はもちろん、天才・武豊。
注目すべきは勝ったエピセアロームの位置取り。
スタートをまずまず成功させた後は、
下げずに先行する上位人気4頭を見ながらレースを進める形に。
ペースが速くなれば自ずと、後ろから行く馬にはチャンスが出てくる。
しかも斤量52キロ。
前を行く馬とは4キロの斤量差。
着差に換算すれば4馬身分。
勝算はあるとばかりに、慌てずに進路を確保しつつ、
一気に伸びてきて、そして鮮やかにゴール前の数完歩で抜き去る。
このセントウルSは武豊という天才が天才たる所以を
見たような感じさえある見事なレースだった。
最近は若手騎手の台頭や、有力馬が回ってこないなど、
競馬界最大の功労者にしては損な役回りばかり
引き受けてきた感のある名手。
そのロードカナロアを抜き去るフォームはキレイで、ムダがない。
最近はゴール前の派手なアクションの騎手や、
隔週で賞金の高いレースを狙って乗りに来る騎手などが重宝されてきたが、
洗練されたフォームから繰り出される人馬一体となった走りは、
「やはり武豊は天才である」と改めて痛感させられる。
小田和正の音楽をバックに
白馬とともに駆ける名CM「最後の10完歩」を思い出す。
その騎乗フォームは本当に美しく、見る者を魅了する。
競馬ファンでなくても一度、見て頂きたいCM。
競馬全盛期を支えてきた武豊騎手。
いつまでも、彼に頼ってばかりもいられないが、
やはりたまには武豊には勝ってほしい。
稀代の名手が
今年の重賞勝ちが京都記念とセントウルSだけというのは
あまりにも、寂し過ぎる。
近年はその武豊の卓越した技術に圧倒されてきた世代の調教師が増えてきている。
やはり時には垢抜けた血統で、キレイに勝つ武豊を見たい。
これは江戸川乱舞と言う競馬ファンのワガママではなく、
多くのファンが思っていることだと思いたい。
2010年のケガでの長期離脱から、ようやく復調の気配を見せてきた名手が、
短距離戦線で復活した若き快速馬・エピセアロームに乗って勝つ。
この秋はまた、数年前のようにどんなレースも勝ちまくる
武豊をまたみたいものだ。
江戸川乱舞 今後の注目馬
・サドンストーム
展開が向いたとはいえ、5着は立派。
久々ということでで割り引きして、印はつけなかったが
この走りなら次は重い印を打てる
・スギノエンデバー
位置取りが後ろになってしまい届かなかったが、末脚は確実。
次回は見直し。