夏競馬も今週で終わり。
重賞戦線を振り返れば、「ニュースターの誕生」というよりは
素質はあると思われていた馬の反撃が多く始まったと言える
夏競馬だったのではないか。
サマースプリントの覇者・パドトロワは昨年のスプリンターズSで2着。
香港に遠征したが、その後はなかなかいい成績を上げる事は出来なかった。
しかし、今夏のアイビスサマーダッシュで一気に良化。
そしてキーンランドCも制し、短距離戦線のチャンピオンに輝いた。
そして関屋記念を制したドナウブルーは
妹の牝馬二冠・ジェンティルドンナに負けじと、牡馬勢を一蹴。
また夏競馬最大のレース・札幌記念で
一つのラブストーリーのハッピーエンドと言っても大げさではなさそうな
太宰騎手とフミノイマージンの鮮やかな勝利も記憶に新しい。
フミノイマージンはこの勝利で
一気にサマー2000シリーズのチャンピオンになるかと思われていたが、
結果的に夏競馬最後のレース・新潟記念で
もう一つのドラマが繰り広げられた形になった。
今年の新潟記念は近年のメンバー構成から考えれば、
なかなかの好メンバーが揃ったように思う。
オルフェーヴル世代でウインバリアシオンと双璧の二番手と言ってもいい
トーセンラーと最強世代の遅れてきた大物・エクスペディションが人気を分け合う中、
格上挑戦のステラロッサや
七夕賞で一気に知名度を上げたアスカクリチャンなど、
一癖も二癖もある馬が揃うレースとなった。
それにナリタクリスタルの3連覇がかかるレースでもあったし、
低評価の馬の中にも新潟巧者が数多おり、波乱の要素は十分だった。
手前味噌になるが、各競馬マスコミ関係者が人気馬に印を集中させる中、
13番人気のケイアイドウソジンに◎を、
メイショウカンパクに▲を打つなど波乱の結末になることを予測した。
結果的にはその通り波乱の決着になるのだが・・・。
レースはケイアイドウソジンが先手を取る形となった。
ハナにこだわっていなかった陣営だったが、
結果的に競りかけてくる馬がおらず、
「それならば」と石橋脩騎手が逃げを決める。
しかし、最初からハナを奪う事を想定していないレース展開の為、
その逃げは若干、中途半端なものになってしまったと思う。
ダイヤモンドSの時のような果敢な逃げは見れず、
2馬身ほど、後続を引っ張るハメになってしまった。
しかし、最後の直線で取ったコースや最後の伸び脚を見ると、
9着は健闘した方だと思う。
レースを引っ張る石橋脩騎手は、
春の天皇賞でオルフェーヴルに一泡吹かせたビートブラックの騎手。
きれいな形で直線には入ったが残念ながら、
このレースは新潟最終週に開催されている。
先週までは圧倒的に前が止まらない・前残りが多いと言われていた馬場であったが、
昨日から様子が違う。
4コーナーを曲がった瞬間から
馬群は大外後方一気を狙う騎手たちで外に膨れている。
外差し有利な馬場へ変貌していたのだ。
岩田騎手のスマートシルエットが先手を打ち、
さらに横山典騎手のタッチミーノットやムスカテールなども勝負に出る。
そしてエクスペディションやトーセンラー、
トウカイパラダイスも疾風の勢いで追いあげてくる。
勝負どころでケイアイドウソジンは進路を内に取るも、ここまで。
後続の集団が上がり3F32秒台中盤を記録する集団が
一気にケイアイドウソジンを飲み込む。
その飲み込んだ集団の中にいた・・・というより、
いつの間にかその集団に入っていたトランスワープが一気に差し切りを決める。
セン馬7歳。前走の函館記念で念願の重賞初V。
この馬も新潟記念の主役になるべき1頭だったにも関わらず、
7番人気の低評価に終わっていたのは、
鬼門とされる最内枠が原因だったのは明白で、
内に包まれたまま、何もできずに終わってしまうのではないかと思われていたせいだ。
事実、レース中は最内を通っており、
折り合いにのみ専念しているようだった。
最後の直線で白い帽子が一気に差し切った時に私は、
同枠のメイショウカンパクが差し切ったのかと思ったが、
まさかのトランスワープに驚愕。
「どっから、ワープしてきた!?」
と結果的にしょうもないダジャレを思い浮かべてしまうほど、呆れてしまった。
レースをよく見ると3〜4コーナーで外に持ち出し、
多少強引な形にはなってしまったが、先頭集団に喰らいつき、接戦を制した。
勝ったトランスワープは函館・新潟記念を制し、
サマー2000シリーズの栄冠も同時に手に入れることとなった。
また大野騎手もトランスワープで重賞2勝目。
(通算3勝)ますます今後が楽しみだ。
今夏はローカルを主戦場とする若手騎手が続々栄冠を手にした。
函館記念の時のレース回顧にも書いていたが、
ローカル競馬だけで燻ってしまうだけの騎手はもったいない人材が多い。
浜中騎手は大ブレイク中だが、この夏競馬で大野騎手や酒井騎手、高倉騎手など、
多くの騎手がリーディング上位の騎手を相手に重賞を制した。
何かあれば外国人騎手や地方競馬騎手を乗せる風潮があるが、
まだまだJRAの生え抜き騎手も捨てたものじゃない。
関係者の方は若手騎手にどんどんチャンスをあげて欲しい。
そして武豊騎手に次ぐスターを、私達ファンと一緒に育んでいければと思う。
さて、長かった夏競馬も今週で終わり。
その花形レースである2000m重賞を2つも制し、
最後にシリーズチャンピオンになるという大きな花火を打ち上げたのは
セン馬7歳のトランスワープ。
まさに夏競馬の格言
「格より調子。夏は牝馬(?)」のセオリー通りのレースであった。
江戸川乱舞 今後の注目馬
・スマートシルエット
相手が牡馬でもここまで健闘。
次走は相手次第で◎
・マイネイサベル
最後の直線で不利を受けてしまった印象。
態勢立て直してきたら勝負。
このコラムを書いた予想家
江戸川乱舞
走らない馬から決めていく独自の的中方法“逆走競馬予想”であたり馬を引き当てる、競馬スピリッツ専属の予想家「江戸川乱舞」。
過去の傾向なども加味した総合的な見解と、いち競馬ファンとしての純粋な視点も忘れないロマン派予想家。
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