終わってみれば、
小倉競馬場のスペシャリストが栄冠を手にしたレースだった。
勝負度胸・レース勘・騎乗センス・ルックスとおそらく現在のJRA騎手の中で
最もハイスペックな浜中騎手の好騎乗が光ったレースだった。
最近、社台グループの中でもサンデーRの勝負服は見かけていたが
社台レースホースの勝負服を見たのは重賞の大舞台では久しぶりだったように思う。
調べてみれば、先月のラジオNIKKEI賞のファイナルフォームで勝っているものの、
その前は3月のマーチSのサイレントメロディまで遡らなければならず、
大勢力を誇る社台グループの中でも最近はあまり目立っていなかっただけに
今回のエクスペディションの勝利は格別だろう。
G1戦線でも好勝負可能なトーセンラーやダノンバラードに
あそこまでの差をつけたのは圧勝と評価しても良いのではないだろうか。
レースはエーシンジーラインが好スタートを切ったので
そのままハナに立つかと思われたが、
内枠を利してミキノバンジョーが先手を取った。
見た目は極端に速そうな展開ではなかった。
しかし、勝ちタイムは1分57秒3。
たしかに3コーナーを過ぎたあたりからレースは一気に動いていく。
勝ったエクスペディションの位置取りと、
トーセンラーの位置取りにさほど差はなく、むしろ内枠を走れた分、
トーセンラーの方が有利に働くはずであった。
しかし、
レースが団子状態になった事が外目にいた
エクスペディションに有利に働いたと見える。
内側におり、有利に作用するはずだった立ち回り方が仇となり、
トーセンラーのアクセルを踏み込むタイミングを失ってしまった様に思う。
これは同様に後ろから行ったダノンバラードやニシノメイゲツにも言えるだろう。
特にニシノメイゲツの高倉騎手に至っては、馬群は大きく外に展開し、
小回りの利を活かしてニシノメイゲツを
インから強襲という作戦を描いているようにも見えたが、
それが仇となってしまったように見えるし、ダノンバラードにしても、
「相手はトーセンラーのみ」というように、小牧騎手も考えているように見えた。
ニシノメイゲツやダノンバラードだけが特殊なのではないだろう。
トーセンラーとダノンバラードに人気が集中し、差しも利く小倉のハンデ戦。
混戦になれば勝ち目はあると踏んでいた陣営も多いはずだ。
中でも、ナリタクリスタルは最後方に位置取りをしていながらも後方一気の伸び脚。
トップハンデももろともせず、
勝負所で一気に仕掛けた名手・武豊の手腕の賜物だろう。
混戦の最終コーナーを避け、大外一気を仕掛けてきた。
この位置取りと仕掛けのタイミングが、
ダノンバラードとの着差に表れているように思う。
勝ちは逃したものの、「さすが天才」と評価せざるを得ない。
やはりG3クラスなら
押さえておかなければならない1頭であると再認識できる1戦だった。
しかし、数多の駆け引きがうごめく中、
勝利を挙げたのが今最もノリにノっている浜中騎手。
地元・小倉出身。23歳の若武者だが
ついに今年全国リーディングも見える位置に来ている。
これから馬質もどんどん良くなるのは間違いない。
団子状態になる3コーナーから外めのコース取りを利して、一気にゴーサイン。
その伸び脚は、上がり3F34.5秒で最速。
格上とも目されていたトーセンラーにも勝る末脚はいかに夏の小倉が得意と言えども、
想像以上のレースぶりだったのではないだろうか。
万事、浜中騎手の好騎乗だけが評価の対象になるわけではない。
レース後のインタビューで、浜中騎手自身が
「この馬らしくないレースが続いていた」と語っているように、
馬の力を知るだけに、浜中騎手自身も悔しいレースが続いていたようだ。
小倉出身の男が、小倉を得意とする愛馬を駆ってのレース。
しかも「2年連続の小倉記念制覇」は嬉しさも倍増していることだろう。
今後の活躍に期待だ。
ラップタイムを見て、レースの中盤から一気に流れが加速している点を考慮すると、
前を行く馬には厳しい展開だった。
が、収穫が無いレースだったかというと、そうは言い切れない馬がいる。
その馬はミキノバンジョー。
彼も小倉は得意としており、穴馬候補の一角であったことは明白だが、
これだけ前を走る馬に厳しい展開となっていて、
4着ダノンバラードとはタイム差0.1秒差は優秀だろう。
もう少し展開が向けば面白い結果になっていただろう。
浜中騎手を始め、夏競馬は若手騎手の活躍が非常に目立つ。
ゲシュタルトを5着に持ってきた中井騎手は
今年デビューしたばかり。
競馬関係者の言う「3キロもらいのあんちゃん」という表現があるが、
平場のレースでは新人騎手には3キロ(3馬身相当)のハンデが与えられる。
今回はそのハンデなしに善戦した。
彼の栄誉も称えたい。
特に騎手の世界は若手の台頭が著しい。
この夏は、
あなただけのお気に入りの若手騎手を見つけてみてはいかがだろうか。
地方競馬出身、外国人騎手が幅を利かす中において、
競馬学校の生え抜きの九州男児の男前は、
今後の競馬界を引っ張る男であることは間違いない。
江戸川乱舞 今後の注目馬
・アスカクリチャン
七夕賞で大穴をあけ、今回は6着。
フロック視される可能性もあるが、
タイム差を見ると同斤量のダノンバラードとタイム差0.1秒。
見限るのは早い。
・ニシノメイゲツ
今回は馬群を捌けずにいたが、平坦小回りの適性はありそう。
次走は小倉日経OP。
滞在競馬なので、好勝負必至。
要注意で。