3週間前の天皇賞を思い出してみて欲しいのですが、
話題の中心は、フェノーメノやカレンブラックヒルといった3歳馬ばかりでした。
そして、先週のエリザベス女王杯の話題も
ヴィルシーナがついにG1を取れるかどうか・・・。
多くの競馬ファンはこの強い3歳に振り回されていませんか?
いえ、別に世代批判をするつもりはありません。
明らかに強い3歳は強い世代です。
個性的な面々も揃っており、10年先、20年先の未来に
「2012年のクラシック世代はなんと面白い世代だったのでしょう」
と思っていてもおかしくありません。
しかし、この強い3歳世代にこの秋立ちはだかっているのは、
同じく「強い」と言われた5歳世代ではないでしょうか?
天皇賞のエイシンフラッシュに、エリ女のレインボーダリア。
これも全て5歳。
そう、牝馬三冠のアパパネを輩出し、
ドバイWCで世界を制したヴィクトワールピサもおり、
そのヴィクトワールピサと凌ぎを削り、オルフェーヴルに肉薄したルーラーシップや
エイシンフラッシュのいる世代です。
オルフェーヴルさえいなければ、
間違いなく歴史に名を残せたハイレベルな世代でしょう。
しかし、その強い5歳世代のウィークポイントと言うのがズバリ「マイル路線」。
これは5歳世代だから弱いのではなく、
「5歳世代も比較的弱い」と言わざるを得ません。
恐らく、デュランダルやダイワメジャーが活躍した2000年代中盤以降、
ひたすら右肩下がりに世代レベルの低下が招いた結果の延長戦にあるこの現象。
そう、「マイルの王者不在」が何年も続いています。
思いだしてみて下さい。
今年の安田記念。
1番人気は単勝6.6倍のサダムパテック。
2番人気は6.7倍のストリングリターン。
最低人気のスマイルジャックですら91倍の単勝オッズ。
何が勝ってもおかしくなかった安田記念です。
実はこの状況に変化はありません。
今週末のマイルCSも混戦が予想されています。
まずその中でも1番人気濃厚なのが、
安田記念2着で前哨戦のスワンSも圧勝したグランプリボスでしょう。
ここにきてようやく素質馬が開花しました。
安田記念以降も成績が安定しており、
抑えなければいけない1頭ですが、マイラーが好成績を残した毎日王冠で6着。
スワンSで勝ったとはいえ、出走メンバーの手薄だった印象です。
全幅の信頼は置けません。
それに3歳が強いと言っても、ファイナルフォームもキケンな印象です。
そもそも気性に難のある馬ですし、G1は初。
歴史をさかのぼれば、3歳馬の勝利はアグネスデジタルが最後。
13番人気を跳ね返した制覇ですが、当時、3歳馬の斤量は55キロ。
現在は56キロですから、
初の1線級相手に斤量1キロ差でどこまで戦えるかが焦点です。
「しょせんは裏街道の主役」という結論で終わっても不思議はありません。
それにストロングリターンも危険です。
適距離ではない毎日王冠という部分は差し引いても、
グランプリボスとタイム差なしの7着はG1馬としては疑問符が付きます。
叩き初戦とはいえ、負けすぎな気もします。
良績が左回りに偏っているのも気になりますし、
京都は見かけ以上に適性が問われる舞台。
初の京都1600mは果たしてどうでしょうか?
それに成長著しいドナウブルーもこのメンバーだとどこまで戦えるでしょうか?
成績的には抑えたいですが、ほとんどの良績は牝馬限定でのものですし、
関屋記念も勝ってはいますがメンバーのレベルを見るとここで通用するかは疑問です。
過剰評価になるようなら逆にオイシイと言わざるを得ません。
今年もマイル路線は超混戦。
何が勝ってもおかしくないなら、純粋な力のある馬から勝負したいです。
冒頭にも申し上げた通り、強い世代は本当に強いので、
マイル路線もここから勝負したいと思います。
その注目の馬は・・・
___SILVER___
コスモセンサーとガルボでしょう。
この2頭の因縁は2010年のNHKマイルCから。
ケガで戦線を離脱した優勝馬のダノンシャンティ以外はどの馬もパッとしない成績。
この時9着だったエイシンアポロンも昨年マイルCSを制しますが、
それ以降の成績は御存じの通り。
コスモセンサー自身もこの時11着。
ガルボに至っては15着と目も当てられない結果。
しかし、4歳を過ぎ5歳を迎えようとしたあたりからこの2頭は本格化。
コスモセンサーはOPを連勝後、東京新聞杯3着。
同じくコスモセンサーと激戦を繰り返しながら、
ガルボもシンザン記念以来2年ぶりの勝利を得て、今年重賞2勝。
しかも寒い時期はめっぽう得意なガルボはこの時期向き。
ガルボに騎乗する石橋脩騎手は春の天皇賞でのビートブラックの大金星があります。
外回りの京都は要注意です。
コスモセンサーも前走こそ、8着ですが、展開などを考えれば、
0.4秒差の8着なら悪くなりません。
しかも今回の乗り役は和田騎手。
和田騎手と言えば先日JBCクラシックでワンダーアキュートで
11年ぶりにG1を制した実力派騎手。
テイエムオペラオーと言えば、和田騎手ですが、
毎年のように重賞を勝っていても、
なかなかビッグタイトルには手が届きませんでした。
テイエムオペラオーに騎乗していたのは20代前半の頃。
デビューして間もなく、自身のオペラオーでの騎乗に
多くのファンや関係者から非難を受けたが、
引退式の時に「オペラオーにはたくさんの物を貰ったが、あの馬には何も返せなかった。
これからは一流の騎手になって、オペラオーに認められるようになりたい」
と語ったのは非常に有名です。
私のようなコアな競馬ファンから見れば、長距離やダートのレースで
これほど信頼して買える騎手はいない程、頼りにしています。
が、オペラオーでの失態のイメージもあってか、
世間ではまだまだ「一流」のイメージは定着していません。
外国人や地方出身騎手ばかりが目立つ中央競馬ですが、コスモセンサー&和田騎手で
「競馬学校花の12期生」の凄さを見せつけて欲しいと思います。
「競馬学校花の12期生」といえば、福永騎手を中心に、
現在解説者として活躍中の細江純子さんが有名です。
女性騎手が3名いたり、
史上初の双子ジョッキーの柴田大知&未崎(未崎さんは現調教助手)など、
話題に事欠きませんでした。和田騎手も「競馬学校花の12期生」の1人。
どうしても、若いフレッシュな存在は話題の中心になりますが、
「忘れられつつある強い世代」に、
混戦のマイルCSでは重い印を打とうと思います。