話題の競馬トピックに独自の視点で陽気に笑顔で辛口に切り込む! 江戸川乱舞コラム「Alohaな競馬」
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2014-11-20 ​オーロマイスター、韓国へ

​ 追分ファームで乗馬になっていたオーロマイスター
2010年の南部杯勝ち馬。

乗馬と言っても、調教や馴致で馬に跨る騎乗者の訓練用の馬ですが、

若手スタッフに一流馬の走りや背中を肌で体験させるという
重要な役割を担っていました。

一応、オーロマイスターも引退後は
追分ファームで種牡馬登録はされていたようですが、
実際には産駒が血統登録されたという話は聞いていなかったので、
功労馬として故郷の追分ファームで過ごしていたようです。

それが今回、韓国へ輸出されることになりました。


先日、地方競馬スピリッツのコラムにも書きましたが、
大井では韓国競馬と交流競走を開いたり、
今回のオーロマイスターを始め、これまで何頭もの日本馬が
韓国へ種牡馬として輸出されていきました。

日本の生産界にとって、重要な取引相手となっているのが
近年急成長を見せる韓国競馬なのです。


韓国競馬は市場をどんどん広げていますし、
それに伴って生産頭数も爆発的に増えています。

ここ十数年で急激な発展を見せている韓国競馬にとって、
隣国の日本競馬は魅力的で先進性の高い市場です。


その市場の中で血統競争に敗れつつある馬を韓国は積極的に輸入しています。

アドマイヤドン、イングランディーレ、スパイキュール、フェデラリストなど
社台グループの生産馬も続々、海を渡りました。


海を渡った彼らは社台グループ生産というだけでなく、
日本を代表する名門牝系出身の馬でもあります。

ちょっと説明していくと、

アドマイヤドン自身もG1を7勝していますが、
一族でも母のベガや兄のアドマイヤベガ、姪にハープスターとクラシック馬がズラリ。

スパイキュールも自身はケガのため早期引退。
重賞勝ちはありませんが、ダートでは7戦7勝とパーフェクトな成績。

こちらも一族にはカンパニーやトーセンジョーダンなど実績馬がズラリ。
「トーセン」の島川オーナーが好んでセリで高値を出して買っている血統の馬ですし、

先日韓国への輸出が発表されたフェデラリストも
父は北米リーディングサイアーのエンパイアメーカー。

母はオークス馬ダンスパートナーで、
叔父にダンスインザダーク、叔母にダンスインザムードとこちらもG1馬がズラリ。

ざっと上げても、こんな感じです。

国内はサンデーの血が入った馬で飽和状態ですし、
サンデー以外にもノーザンダンサー、ミスタープロスペクターの血が
かなり根深く勢力を広げています。

生産頭数の減少、技術や環境の進化で、1頭あたりの種付け数が増え、
強い種牡馬に多くの牝馬が集まる「種牡馬の寡占化」が叫ばれて久しいですが、

実績馬に加えて、良血というだけでは
繁殖馬が集まらなくなった今の日本国内の馬産の現状を考えると、

如何に社台グループが抱える名門牝系出身の馬でも、
種牡馬として国内では生きていけないのかもしれません。

それは今の種牡馬に求められているのは「血」ではなく、
圧倒的な個性が必要とされているからではないでしょうか?

ディープインパクトの強力な「個の力」
キングカメハメハの「抜群の万能性」
ゴールドアリュールの「ダート適性」

一流種牡馬でも高い能力だけでなく、
唯一無二の個性が必要とされている時代です。


2、30年前と違い、全体的な血統レベルが上がっている今の時代は
「良血」という言葉は多くの生産者にとって
魅力的な物ではなくなってきているのかもしれません。

良血馬でなくとも、
「短距離の平坦小回り」ヨハネスブルグ、「ダートスピード王」サウスヴィグラス、
といった安価ながらも長期間賞金を稼げる種馬がもてはやされる馬産事情を考慮すれば、

社台グループが長年大事にしてきた血統を
韓国で繋いでいくという判断は間違っていないのかもしれません。


安い種付料で少ない頭数しかいなくても、
国内で種付を続けるという判断も無いわけでは無いと思いますが、

種牡馬の寡占化、海外からの良質な繁殖牝馬の輸入、
それに伴う古参血統(サンデー系含む)牝馬の
小規模牧場への安価の払い下げという循環を考えれば、

サンデーサイレンスの血を持った社台の名門牝系出身の種牡馬には
国内の生産競争で勝ち抜く事は非常に厳しい現実があります。

国内で厳しい競争をするくらいなら韓国の生産競争に参戦する方が
大事にしてきた血を残しやすいですし、国内の牝馬よりも高いレベルの馬に
種付できるチャンスもあるでしょう。

日本の血統レベルの上昇は一見喜ばしいものですが、
その裏には競馬ブームをけん引した馬達の血が
国内の隅の方へ追いやられ、海を渡るケースが増えてきています。

それが悪いと言っているのではありません。

生産競争は競馬の世界では日々、繰り広げられている命を懸けた戦いです。

国内でニーズの無い馬でも、海外に目を向ければ、
ガラパゴス的な日本血統を高く評価してくれる場所があります。

日本の血統・馬産レベルが認知された今の時代だからこそ、
起こりうる一つの現象かもしれません。

これからも韓国をはじめとして、
多くの国へ日本馬が輸出されていくでしょう。

世界への挑戦は現役競走馬だけの話ではないのです。



 

このコラムを書いた予想家

江戸川乱舞
競馬好きな平凡サラリーマンから、「逆走競馬予想」を引っ提げて競馬評論家の仲間入り。

また競馬予想だけでなくコラムニストとしても活動中で、
競馬スピリッツ上で「競馬はロマン」を地で行くコラムを掲載中!

予想スタンスはまさに常識から対極への「逆走」。
「勝つ馬」ではなく「負ける馬」から選んでいき、最後に残った馬をまとめ買い。
「全通り買えば当たる」が持論の逆走競馬コラムニスト。 得意な予想スタイル:単複・ワイド・三連単 など

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