2014-07-31 思い上がりの夏-回想-
タイトルを聞いて、一気に興味がわいた江戸川。
玉木宏や石原さとみ、佐藤浩市といった人気俳優らが
多数出演する作品なので興味がわかないという人の方が少ないはず。
いや、しかし、江戸川が興味を持ったポイントはやや違う。
「もしかして・・・」と思いながら帰宅後、調べてみた。
やっぱりそうだ。その通りだ。
「原案・協力 眉村卓」となっていた。
このコラムを読んでいる方の中にもこの映画の存在を知っている人もいるだろうし、
1994年にTVドラマとして放映された「幕末高校生」で知っている人も多いはず。
NHKで1977年にも「幕末未来人」としてTVドラマで
放送されていたので、そちらを知っている人も多いかもしれない。
とにかく、今回の映画はそのリメイクのリメイクのリメイク。
現代の高校生が幕末の時代に何らかの原因で飛ばされて、
そこで歴史上の重要人物と出会って・・・という話。
よくあるタイムスリップモノだ。
ただ、江戸川が知っているのは
映画の「幕末高校生」でもドラマの「幕末高校生」でも無い。
実はどちらも見たことが無いし、
そもそもその名前で記憶していなかった。
そう、私が知っているのは70年代に角川文庫から発表された
眉村卓の短編集「思いあがりの夏」に収められた「名残の雪」という短編小説。
この「名残の雪」こそ「幕末高校生」の原作。
活字・マンガを含め、そこまで文字を読むことが少ない人生を送っていた江戸川が
高校生の時に人生で初めて、読書に熱中した時期に読んだのが眉村卓作品。
なかでも「名残の雪」はその出来のよさに、心の中に生き続けていた作品。
一気に懐かしさがこみ上げてきたので
その想いを書きなぐっていたら大変なことになってしまった。
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そもそも眉村卓とは誰なのか?
という疑問をお持ちになった方に説明を。
星新一や小松左京、筒井康隆と同系統の作家といえば伝わりやすいかもしれませんが、
「なぞの転校生」「ねらわれた学園」という
80年代に映像化されたコンテンツの原作者で、
2011年に映画化された「僕と妻の1778の物語」の原作者というか
モデルになったご本人というか、とにかくこれまで数多くの作品を生み出してきた人物。
そんな眉村卓と江戸川の出会いは高校1年生の冬。
何かの拍子にたまたま見た「幻のペンフレンド2001」という
NHKの教育テレビで放送されていたドラマを見たのがきっかけ。
土曜の夕方に放送されていた作品で、
物語の中盤くらいから見始めて最終回を迎える頃には
すっかり春になっていてもうすぐ高校2年生という時期に。
放送中に「幻のペンフレンド2001」は
眉村卓という作家が1960年代に書いた作品であるということを知り、
そんな昔らしさをみじんも感じない出来で、
現代風にうまくアレンジされていたのが印象的でした。
「なんか面白いドラマだったし、物語の前半を見てないから原作を読んでみよう」
と、思い立ったのが眉村卓作品を読むきっかけ。
毎週土曜日に放送されていた「まぼろしのペンフレンド2001」は
競馬中継と同じくらい週末の楽しみになっていたし、
特に何かに熱中していることもなかった時期。
「暇をつぶすイイ材料になる」と思い、原作を買いに本屋へ。
ただ、実際に近所のいくつかの本屋に行ってみたものの、
2001年当時で既に30年以上前の作品でしたし、
田舎町だったせいか「眉村卓」作品を置いている店も無く、
当時はインターネットと無縁の生活を送っていたので、
amazonに頼ることもせず、というか存在も知らず、
原作の本を手にすることは出来ないでいました。
漠然と「読んでみたいな」と思いながら高校2年生になり、季節も春から夏へ。
1学期の終わりも間近に迫った土曜日の午後、授業を終え、
自分の家とは真逆にある最寄駅に向かって電車通学の友人と帰宅していた江戸川。
話題にしたのはこの年、右回りから左回りに馬場を改修し、
日本で最初の直線1000mのレースが登場する新潟競馬場の話。
「新潟は今年から左回りになるんだ」
「1000m向こうからゴールに向かってくる競馬ってどんな感じだろうね」
「今日から新潟のレースがあるから楽しみだ」
と、そこそこ競馬の話ができる友人と盛り上がる江戸川。
駅で友人と別れ、普段通らない商店街を通り帰宅。
シャッター街になりつつあった古びた駅近くの商店街。
7月の暑さの中うろつく僕の視線に入ってきたのは一軒の古本屋。
ブックオフのようなオシャレな外観とはお世辞にも言えないけれど
大きな一軒家の一部を古本屋にした感じの佇まい。
入り口のところで店主らしき老人がテレビをつけて、新聞を読んでいる。
眉村卓の「まぼろしのペンフレンド」が心の奥底で気になっていたので、
「これだけ古そうな店なら、置いているかも」と思いながら、おそるおそる中へ。
「いらっしゃいませ」も言わない愛想のない老人、
ずっと視線を新聞に落としたままだ。
専門書や古いの雑誌といったものが並ぶ棚のそばに
一般の本屋さんではあまり見かけない明らかに古い文庫本がたくさん並ぶ棚を発見。
作者の名前順に並ぶ棚の「ま行」を探す。すると、あった。
「まぼろしのペンフレンド 眉村卓」
緑色の色あせた角川文庫と書かれた本を見つけた。
もう何年も開かれていないであろうページをめくり、
中を少し確認すると、ドラマに出ていた登場人物の名前も散見出来たし、
棚に目をやってみると、「眉村卓」作品が他にもたくさんあった。
というより古い本ばかりだが、結構な数の眉村作品があった。
ただ、とにかく「まぼろしのペンフレンド」にしか興味が無かったし、
ずっと心の中にあった読みたかった作品を手にすることが出来たほうが嬉しく、
興奮を隠せないままレジ…というか入り口の老人のもとへ。
その途中になんの脈絡もなくアダルトなビデオの棚があって
(当時はまだVHSが主流だった)
高校生の江戸川にはいろんな意味で興奮したが、すまし顔で会計へ。
30年以上前に書かれた本をたった100円で手に入れることが出来た。
ニヤニヤしながら店を出る。
時間は2時38分。
土曜競馬中継まで20分ほどしかない。
その古本屋から家までは徒歩で30分はかかるだろう。
やや小走りに店を後にした。
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回想をしてたら、長くなったので次週へ持ち越します。。。
このコラムを書いた予想家
江戸川乱舞
競馬好きな平凡サラリーマンから、「逆走競馬予想」を引っ提げて競馬評論家の仲間入り。
また競馬予想だけでなくコラムニストとしても活動中で、
競馬スピリッツ上で「競馬はロマン」を地で行くコラムを掲載中!
予想スタンスはまさに常識から対極への「逆走」。
「勝つ馬」ではなく「負ける馬」から選んでいき、最後に残った馬をまとめ買い。
「全通り買えば当たる」が持論の逆走競馬コラムニスト。 得意な予想スタイル:単複・ワイド・三連単 など
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