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2012-08-29 ​柴田善臣騎手とルーベンスメモリー

​ <p> 競馬ファンを細かく分類すると<br /> いくつかのカテゴリーに分けられる気がします。<br /> </p> <p> 「馬が好き」「賭け事として好き」「種牡馬好き」「乗馬も好き」などなど・・・<br /> 細かく分ければキリがないと思いますが、<br /> 中には「○○騎手が好き」という人も多いのではなでしょうか。<br /> 武豊騎手は言うに及ばず、若手では福永騎手も全国的な人気があります。<br /> </p> <p> 個人的には関東だと武士沢騎手や石橋脩騎手、<br /> 関西だと和田騎手あたりも好きですが、<br /> 今回は関東のベテラン・<span class="red b">柴田善臣騎手</span>について書こうと思います。<br /> </p> <p> 関東所属なので<br /> 関西のオールドファンの方にはなかなか縁が無いかもしれませんが、<br /> ゲームやインターネットの普及で若い競馬ファンには<br /> 彼の名前はかなり浸透しているのではないでしょうか。<br /> ネットの某巨大掲示板でも<br /> これほどまでに愛されている騎手はいないように思います。<br /> </p> <p> 柴田善臣騎手は現在46歳。<br /> 昨年の12月に<span class="b">ナカヤマナイト</span>で通算2000勝を達成した騎手で<br /> 現在の勝ち星数は岡部騎手・武豊騎手・河内洋騎手に続いて<br /> <span class="big-s">歴代4位の大記録を持っていながら、クラシックは0勝。</span><br /> 世間的にはかなり地味な騎手の部類に入ると思います。<br /> </p> <p> 柴田善臣騎手の愛されるポイントは、<br /> 午前中の平場のレースで<span class="red">穴っぽい馬で勝ち星を重ね</span>、<br /> G1や平場のレース問わず人気馬に乗った時は<br /> <span class="b u">ギリギリ馬券圏外の4着か5着に持ってくる</span>という点でしょうか。<br /> (ファンの間でこれらの騎乗は「伝統芸」と呼ばれているようです) </p> <p> また釣りやワインを趣味として、<br /> 一時期は「鷹匠」として2羽の鷹を飼っていた事もあったり、<br /> 愛犬家として度々、ブログやツイッターにも登場させるなど、<br /> その人柄も愛されるポイントです。<br /> </p> <p> さらに左回りのG1で勝ち星を重ね、<br /> 全7勝のG1勝ちの中で実に6勝を左回りで上げています。<br /> また唯一の右回りG1勝ちは2010年の宝塚記念で<br /> <span class="b">ナカヤマフェスタ</span>に跨って女傑・<span class="b">ブエナビスタ</span>を破っていたりするところも<br /> 彼らしい実績です。<br /> </p> <p> 前述したようにクラシックは未だ勝ち星がありません。<br /> しかし昨年の日本ダービーでは有力馬ナカヤマナイト(4番人気)に騎乗。<br /> 更に左回りのG1という事で<br /> 「初クラシック制覇がダービーになるか?」<br /> 「叔父の柴田政人は18回目、善臣は16回目で制覇!偉大な叔父を越えるか?」と、<br /> かなりファンの間でもかなり盛り上がりを見せましたが、<br /> <span class="b u">結果は狙い澄ましたかのように4着</span>。<br /> しかも2分30秒走って、3着とは0.1秒差の4着ですから、<br /> ”ある意味で”ファンの信頼を裏切らない騎手です。<br /> </p> <p> 個人的にも好きな騎手ですが、<br /> 私が彼をゲーム以外で知りファンになったのは<br /> <span class="b">ルーベンスメモリー</span>という馬の存在が大きいです。<br /> </p> <p> ルーベンスメモリーは2002年にデビューした馬です。<br /> 父は私が最初に好きになった馬ジェニュインで、通算成績は40戦6勝。<br /> </p> <p> 重賞での特筆すべき実績はありませんが、<br /> 3歳時には山吹賞でゼンノロブロイの2着に健闘したこともあり、<br /> OPクラスでも活躍していた馬です。<br /> </p> <p> そう、このルーベンスメモリーに騎乗していたのが<br /> 柴田善臣騎手なのです。<br /> </p> <p> しかもこのルーベンスメモリーという馬は、<br /> 他の競走馬には無いハンデキャップを抱えていました。<br /> </p> <p> デビュー後、調整中のウォーキングマシンの中で右目を強くぶつけてしまい、<br /> それが元で失明し、眼球を摘出。<br /> <span class="red b">ルーベンスメモリーは隻眼のまま競走馬として走る事になったのです</span>。<br /> </p> <p> 右目が見えないので、<br /> 左回りでルーベンスメモリーが安心してラチ沿いを走れる<br /> 東京や新潟で戦績を重ねます。<br /> しかしそんな逆境の中でもルーベンスメモリーは<br /> 中山などでも走り掲示板を確保したりしており、<br /> <span class="b u">その素質の高さを垣間見る事もできます</span>。<br /> </p> <p> また5歳時には中山競馬場で右目が見えないハンデを乗り越え、<br /> 右回りの競馬場で特別戦勝ち。<br /> 年が明けた6歳時にも中山競馬場で準OP戦・迎春Sを勝ち、<br /> 一気にOPクラスまで上り詰めます。<br /> </p> <p> しかもこの迎春Sの1番人気になっていたのは後に重賞勝ちし、<br /> 種牡馬になる<span class="b">トウカイワイルド</span>。<br /> この馬の騎乗依頼も柴田善臣騎手の元にやってきますが<br /> 「ルーベンスメモリーは自分にしか乗れないから」と、<br /> ルーベンスメモリーへの騎乗を選びます。<br /> </p> <p> 結果は好位置を追走し、<br /> 直線はしぶとく粘る<span class="b">シャドウビンテージ</span>を振り切って勝利。<br /> 念願のOPクラス入りを決めます。<br /> </p> <p> しかし、OPクラスでは2着が限界で、<br /> 長い現役生活の中では柴田善臣騎手以外の騎手も乗せながら、戦績を重ねます。<br /> </p> <p> そして2007年12月15日のディセンバーS。<br /> この時7歳になったルーベンスメモリーはついに引退レースを迎えます。<br /> <span class="b">乗り役はもちろん、柴田善臣。</span><br /> 4戦ぶりの騎乗でした。<br /> </p> <p> レース前、柴田善臣騎手は「最後だからがんばろうなぁ」と<br /> 優しくルーベンスメモリーに語りかけたと言います。<br /> </p> <p> 決して得意とは言えない中山競馬場でのレースでしたが、<br /> 単勝11番人気の低評価を覆し7着と健闘。<br /> 5年間の競走馬生活を終えます。<br /> </p> <p> 隻眼の競走馬として、<br /> ハンデキャップを乗り越えOPクラスまで上り詰めた1頭の競走馬は、<br /> 今でも柴田善臣騎手を語る上で、忘れてはならない1頭です。<br /> あまり目立った活躍馬を出せなかった<br /> ジェニュイン産駒の中でも印象深い1頭で、<br /> 私も未だに思いだすと胸が熱くなります。<br /> ルーベンスメモリーは種牡馬にはなれませんでしたが<br /> 故郷の社台ファームで訓練用の乗馬として余生を送っているようです。<br /> </p> <p> ・・・そして、<br /> ルーベンスメモリーの引退から4年後のディセンバーS。<br /> </p> <p> <span class="red big-s">柴田善臣騎手はナカヤマナイトでJRA通算2000勝を達成します。</span><br /> </p> <p> 勝利の瞬間、<br /> 私の心の中にルーベンスメモリーが蘇ったのは言うまでもありません。<br /> 嬉しさや懐かしさや・・・もう気持ちが一杯になったのを覚えています。<br /> </p> <p> 「午前中のレースでさらっと2000勝達成するんだろうな、<br /> そうなったら柴田善臣らしいな」と思っていたら、<br /> メインレースで、しかも2011年の代表格のお手馬で<br /> 見事な差し切り勝ちを披露したこの日の柴田善臣騎手。<br /> </p> <p> 「魅せるなぁ、魅せる男だなぁ」と感心していたら、<br /> その直後の最終レースで<br /> <span class="b u">単勝1.5倍のバリバリの一番人気馬を9着に飛ばしてしまい</span>、<br /> 「さすが柴田善臣(笑)」とファンを魅せる競馬も忘れない。<br /> </p> <p> 彼もまた競馬ファンに愛されている騎手の1人であると、<br /> 私は心から思うのです。<br /> </p>

このコラムを書いた予想家

江戸川乱舞
競馬好きな平凡サラリーマンから、「逆走競馬予想」を引っ提げて競馬評論家の仲間入り。

また競馬予想だけでなくコラムニストとしても活動中で、
競馬スピリッツ上で「競馬はロマン」を地で行くコラムを掲載中!

予想スタンスはまさに常識から対極への「逆走」。
「勝つ馬」ではなく「負ける馬」から選んでいき、最後に残った馬をまとめ買い。
「全通り買えば当たる」が持論の逆走競馬コラムニスト。 得意な予想スタイル:単複・ワイド・三連単 など

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